2019.04.11
経営計画は仮説で立てる |「売上=客数×客単価」の「客数」を分解する
経営計画で「今年は売上◯%アップ」という目標を立てても、現場の行動や振り返りにつながらないことは少なくありません。
売上は「売上=客数×客単価」と分解できますが、その式を仮説として使えているでしょうか。
本記事では、このうち「客数」に着目し、行動を導く目標の立て方を整理します。
目次
売上目標は立てているのに、なぜ行動が変わらないのか
目標に「仮説」が入っていないと、学びが残らない
売上は「客数×客単価」に分解できる
客数は「来た人の数」ではない
BtoBでも構造はまったく同じ
仮説があると、期末の振り返りが変わる
売上目標の前に、客数の仮説を置いていますか?
売上目標は立てているのに、なぜ行動が変わらないのか
経営計画を立てるとき、「今年は売上を○%アップしよう」といった目標を掲げることは、ごく自然なことだと思います。ただ、その目標を社員さんに示したとき、「どうやって実現するのか」を具体的にイメージできているでしょうか。また、期末になって「なぜ達成できたのか」「なぜできなかったのか」を、社員さん自身の言葉で説明できる状態になっているでしょうか。
現場を見ていると、そこが曖昧なままになっているケースは少なくありません。数字は立てたものの、日々の行動は前年とあまり変わらない。振り返りをしても、「もっと頑張ればよかった」「景気が厳しかった」といった話で終わってしまう。そうした状態が続く背景には、目標の立て方そのものに問題があるのではないかと、私は感じています。
目標に「仮説」が入っていないと、学びが残らない
私がよくお伝えしているのは、目標は「結果を測るための数字」ではなく、「行動を導くための仮説」だという考え方です。この数字に到達するためには、どんな行動が必要なのか。どんな前提条件が成り立てば実現できるのか。そこまで考えてはじめて、目標は現場で使えるものになります。
仮説のない目標は、達成できたかどうかは分かっても、「なぜそうなったのか」が分かりません。達成しても偶然なのか必然なのかが判断できず、未達で終わった場合も、次に何を変えればいいのかが見えてこない。これでは、せっかく時間をかけて経営計画を立てても、組織に学びが残りにくいのではないでしょうか。
売上は「客数×客単価」に分解できる
では、仮説を入れた目標とはどんなものなのか。ここからは、売上という数字を題材に考えてみます。売上はシンプルに表せば、
売上 = 客数 × 客単価
ですよね。
今回はこのうち、「客数」に焦点を当てます。客単価については後編で扱いますので、まずは売上目標を客数の側からどう考えるか、という視点です。
客数は「来た人の数」ではない
客数という言葉は便利ですが、その中身は意外と曖昧に扱われがちです。「来た人の数」「引き合いの数」と一言で済ませてしまうと、どこに手を打つべきかが見えにくくなります。
たとえば来店型の事業であれば、客数は次のように分解できます。
どれくらいの人が来てくれたのか。そのうち、どれくらいの人が購入してくれたのか。初めて来た人はどれくらいだったのか。リピートしてくれた人はどれくらいか。こうして見ていくと、客数とは単なる人数ではなく、行動の積み重ねだということが分かります。
つまり客数とは、新規のお客様がどれくらい来て、どれくらい購入してくれたのか、既存のお客様がどれくらい戻ってきてくれたのか、そうした要素の集合体です。
BtoBでも構造はまったく同じ
「それは小売や飲食の話でしょう」と思われるかもしれません。しかし、BtoBでも考え方はまったく同じです。BtoBに置き換えると、客数は次のように分解できます。
引き合いはどれくらいあったのか。そのうち、どれくらい受注できたのか。既存顧客からの再受注はどれくらいあったのか。式で表せば、
売上 = 商談数 × 受注率 × 客単価
となります。
「売上◯%アップ」という目標を、この構造に当てはめてみると、新規の引き合いを増やすつもりなのか、受注率を上げるつもりなのか、既存顧客からの再受注を増やすつもりなのか、どこを動かす計画なのかがはっきりしてきます。
仮説があると、期末の振り返りが変わる
客数について仮説を置いて目標を立てておくと、期末の振り返りの質が変わります。引き合いは想定どおりだったのか。受注率は仮説と比べてどうだったのか。再受注は増えたのか、それとも別の要因が影響したのか。ズレた場所が、感覚ではなく構造として見えてきます。
これは、達成・未達を評価するためだけの振り返りではありません。「次はどこを変えるか」という次の一手を考えるための振り返りです。仮説をもって立てた目標は、結果がどうであれ、必ず学びを残してくれます。
売上目標の前に、客数の仮説を置いていますか?
今回お伝えしたかったのは、売上目標を立てる前に、まず「客数についてどんな仮説を置いているか」を問い直してみてほしい、ということです。新規を増やすのか、既存を深掘りするのか。それとも、そのあたりが「なんとなく」になっていないでしょうか。
数字を掲げること自体が悪いわけではありません。ただ、その数字が行動を導き、振り返りで学びを生む仮説になっているかどうか。そこが、経営計画が機能するかどうかの分かれ目なのではないかと、私は考えています。
後編では、もう一つの要素である「客単価」をどう仮説として扱うかを考えていきます。客数と客単価、両方を仮説として組み合わせたとき、売上目標は初めて「使えるもの」になるはずです。
あなたの会社では、客数について、どんな仮説を置いていますか?
公開・更新履歴
2019年:公開
2025年12月21日:大幅に加筆・再構成