ブログ

2019.05.01

売上重視が招く悲劇…

「売上」はキャッシュの源泉ですから会社にとって必要不可欠なものです。
ですから、経営者としては、売上に注力しがちですし、従業員さんにも「売上、売上!」とハッパをかけたくもなります。

従業員さんに売上ばかりを意識させてしまうと引き起こしてしまう悲しい事例を2つご紹介します。

<ケース1>

観光シーズンには1日200万円近くを売り上げる県内小売業さんのケース。

そのお店では、従業員さん個人の判断でお客様に提示できる値引率は
 一般客:10%まで
 親戚、特別な知人・友人:20%まで
と決められていました。

ターゲット層が観光客というこのお店で県内リピーターさんが多い古参の販売員Tさんは、接客中に親しくなった県内一般客さんを「お話ししてて親しくなったから特別なお友達♪」と勝手に基準を緩め、20%値引きで販売。

お客様も次からはTさんを指名買い。
これが常態化しているうちにTさんの基準はどんどん緩みついには30%、40%の値引きで販売するようになっていました。

このお店の平均原価率は約40%、販管費率が約40%ですので20%の値引きで利益ほぼゼロ。

つまり、Tさんは長年、売れば売るほど赤字を生み出していたわけです。

Tさんにも言い分はあり、「売上が上がるでしょ。お客様も喜ぶしでしょ。いいことづくめで会社の方針どおりでしょ♪」ということでした。

会社が決めたルールを守れない本人の資質の問題やチェック機能がなかったお店の問題もありますが、売上だけでなく、利益にも注意を払わせることができなかった経営側にも問題の一端はないでしょうか。

<ケース2>

年商5億円規模の卸売業さんのケース。

何年も未回収となっている1件あたり200〜300万円ほどの売掛債権が3本ほどあるが、どうしたらいい?との相談でした。

1つは詐欺、2つは倒産とのことでした。詐欺の相手方はプロなので足がつかないようにしてあり被害届不能。倒産の2社は夜逃げに会社清算終了でどれも回収不可能です。

社長さんは悔しくて帳簿から落とさずに何年も経過していたのですが、体力のあるうちに損金処理を勧めました。

それよりも、私が気になったのは、なぜこんなことが繰り返されたのか?その原因です。

これら売掛先のひと月あたりの受注額はだいたい20万〜40万円。取引条件はいずれも、納品翌月末の振込払い。つまり、半年以上も入金がないままいそいそと納品し続けたことになります。

担当した営業マンのKさんは、新たに開拓したこれらの取引先が自らの売上目標達成への貢献度が高いため、入金がなくても毎月売上が計上されるので納品を続けたようです。

これまた本人の資質の問題もあるでしょうが
・売掛金回収の責任は誰にあるのか
・新規開拓時の与信調査
・滞留債権の管理
・取引契約書(基本契約と個別契約)
など、様々な問題を含んでいるのでこれらは別の機会に取り上げたいと思います。