2020.09.09
カタチから入りたがる人
台風9号、10号と立て続けにやってきましたが、みなさんの店舗や事務所、設備は大丈夫でしたか?
一昨日、昨日と晴天に恵まれましたが、今日の沖縄本島はどんより、それでいて変わりやすい天気です。
沖縄県内で大規模な観光土産品販売店を営む社長さんが「牧野さん、ちょっとついてきてほしい」というので、知り合いの社長さんが運営しているというお店に連れて行かれました。そこは、海外製のリゾートウェアのショップ。そのお店が沖縄に出店するのをこの社長が手伝ったんだそうです。
ひととおり店内を見て回りお店を出たあと、近くのカフェでお茶しながら「あのお店の店員は、基本給プラス歩合制なんですって。だから、店員がガンガン接客してガンガン売るんですよ。」と興奮気味に話します。
この社長さんがいつも「うちの従業員はカウンターの中にいてばっかりで全然接客しない」とグチをこぼしていたのを思い出しました。それと、この人は、仕事にしても趣味にしても何か新しいことを始めるときは、まずはカタチから入るタイプの人であることも。
社長:うちもあんなふうにガンガン接客させるには、社員の評価を各人の売上金額にすればいいと思うんですよ。どうです、いい考えでしょ!
牧野:いやぁ、それは、やめておいたほうが…
社長:どうして!?
牧野:業態というか売り方が違うでしょ。あの店はいってみればブティック。来店客をきちんと接客して売ることが求められていますし、店員さんそれぞれの積極性や接客技術によって売上も違うでしょうから、歩合にするのは自然な事かもしれません。
社長:じゃあ、ウチは?
牧野:あなたの店はいわば小売店。観光バスから降りてきたお客さんがどっと入ってきて、店の中を見て回り、気に入ったものを手にとって、レジでお金を払って帰っていく。レンタカーのお客さんはゆっくり買い物するでしょうけど、スーパーに近い。
社長:それでも、どれだけのお客さんに対応したかで社員を評価してもいいでしょ。
牧野:じゃぁ、どうやってそれを測ります?
社長:うちのレジは会計の度に毎回、社員番号を入れるようになっているから、誰がいくら売り上げたかわかるようになってる。
牧野:それは、その人が「売り上げた」んじゃなくて、「レジ打ちした」ってことでじゃないですか?
社長:いや、売り上げたんですよ。
牧野:いや、レジ打ちした、ですよ。やるにしても、店内のどの人たちを対象にやるんですか?
社長:全員。
牧野:いやいや、あなたのお店はバックヤードでの商品の検品、店内への品出し、お客様が買った商品の自宅へ発送、記念品の大口注文、それ以外にもそれぞれ持ち場があって、みんなで助け合ってお店を営業してるじゃないですか。それに忙しいときは、会計カウンターもレジを打つ人と商品を梱包する人の二人一組でやってますよね。カウンターでのお客様の会計は、みんなで助け合ってやる仕事のひとつなんですから。
社長:でも、カウンターの向こう側にみんなこもっておしゃべりばかりで困っている。彼女たちも販売員なんだからカウンターから店内に出てきて接客して売ってもらわなければ困る。さっきの店みたいに一人ひとりの売上で評価することで、うちの社員も積極的に接客するようになるはずですよ。
牧野:いやいや、絶対にやめたほうがいいですって。
この社長、その後、導入に踏み切ろうとしたそうなんです。でも、私が想像したとおり、店員さんたちから「じゃぁ私、接客もしないし、自分の持ち場の仕事もしないで、レジの前から離れない」「私もそうする」「私も!」「私もレジしかやらない」の大合唱。それではお店が運営できないとマネージャーからも再考を促され、断念したそうです。
他社でやっていることを「あれいいな。うちでもやってみよう」と表面的なことをまねるのではなく、
「あそこは、なぜあれをやっているのか。なぜやれるのか。」
「では、うちで取り入れる意味は? やれるのか? 問題は出ないのか?」
といったことを考えた上で決めなければなりません。
あなたは、カタチから入る人ですか?
それとも、本質から入る人ですか?