2020.09.25
味方を敵にまわす。
昨日ご紹介したスゴ請け企業の中で、デニム素材で国内シェア55%を占める株式会社カイハラ。ユニクロ、リーバイス、エドウィンなど名だたるデニムウェアのメーカーから注文を受けています。
カイハラでは、糸を拠るところから染色して織り上げるまで、すべての行程を社内で完結させています。なぜなら、糸、染色、織り、それぞれの工程毎にデニムの風合いを決めるノウハウが詰め込まれていて、だからこそ各メーカーからの細かい注文に応えられるんだそうです。
でも、大手ブランドから生地を依頼されて国内シェアの半分以上を握っているぐらいなんだから、中小企業が目指す姿のもう一つ「自社製品」を製造しても良さそうなものだと加藤浩次さんが質問したところ、カイハラとしては「あくまでも素材に徹する」んだそうです。
その答えを聞いて、加藤浩次さんが「やっぱりそれはメーカーを守るということなんですか?」と質問していましたが、そういうことではないでしょう。それに「守る」というのは自分が相手より強い立場にいる時に使う言葉です。
最終製品の開発ということになれば、リーバイスやエドウィンと競えるだけのアパレルメーカーとしての製品開発力が必要になります。また、ブランド力もないですからマーケティングコストもかかります。それになんといっても、戦う市場がこれまでとはまったく違ってきます。
「メーカーを守る」なんて、リーバイス、エドウィンと同じ土俵で戦って勝てるだけの商品力、ブランド力をカイハラが持っているというのでしょうか?逆に返り討ちにされるのではないでしょうか。それはカイハラ自身がわかっているはずです。
一方で、お客さんであるリーバイスやエドウィンと同じ土俵に上がって自らも戦うことになれば、素材メーカーとしての受注量が無くならないまでも減らされることは十分に考えられます。シェアトップといえども55%なんですから、リーバイスやエドウィンとしては2位、3位のメーカーの開発力をを育てながら徐々に発注先をそちらにシフトしていくことを考えるでしょう。また、新製品については競合相手に情報を提供をするのは嫌うでしょうからもう発注されなくなる可能性は高いでしょう。
減らされた分を自社製品の売上で補えればいいでしょうが、リーバイス、エドウィンのシェアをそれなりに奪わなければなりません。そんなリスクは犯さないと思いませんか?
味方を敵に回す構図になっていることをおわかりいただけたでしょうか?