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2021.03.22

●●が長〜い日本。

先週は、父が建具の木工所を営んでいたことをご紹介しました。
居間のちゃぶ台で父が「カリカリ、ガチャン。カリカリ、ガチャン、ガチャン、ガチャン。」と紙に数字を打っていたのを思い出します。小切手を振り出すのに打刻機(「ローターリーチェックライター」というんだそうです)で金額を印字していたんですね。

信用金庫とはいえ、個人商店が当座預金を持っていたことに驚かされます。
遺影に向かって「オヤジ、やるな」と。

月末になると、取引先さんが入れ替わり立ち替わり集金にやってきて、用意していた小切手を母が渡して領収書を受け取る。
父も「集金に行ってくる」と集金カバン(懐かしいっ!)を持って出かける。
懐かしい昭和の風景。

「手形は絶対に切らん」と父は言っていました。
当座預金口座を持っているのですから手形も振り出せたはずですが、その理由までは教えてくれませんでした。

紙の約束手形を2026年までに廃止する方針を経済産業省が打ち出しました。(2月18日付日本経済新聞)

手形は明治以来の日本独特の商習慣。支払いの猶予になるので、発注企業の資金繰りに役立ってきました。しかしながら、1990年をピークに年々発行額は減り続け、現在ではピーク時の1/4程度まで減少しています。

まもなく2000年になろうとする頃、財閥系企業さんの経営管理システムの導入プロジェクトで、支払業務の効率化を検討していました。管理の手間がかかるし、紙や印紙の費用もかかるので手形を止めたいのだそうですが、下請け企業さんの中には、わざわざ手形で欲しいというところもあると聞き驚きました。
その理由は、その財閥系企業さんが振出人になっている手形の効果。割引するにしても裏書きして回すにしても「あの会社とこれだけの金額の取引している」ということを示せるからなんだそうです。

とはいえ手形は、支払う側の支払猶予になる代わりに、受け取った側の現金化を遅らせ資金繰りを厳しくすることになります。
近年では受注側の中小・零細企業がしわ寄せを受けるという、負の側面が目立ってきているようです。

手形だけでなく、掛取引に見られるように支払いサイクルの長い日本の取り引き慣行は海外ではあまり例がなく、欧米では、振込、クレジットカード、小切手などが主流とのこと。(35年ほど前のことですがオーストラリアに住んでいたとき、商取引だけでなく、スーパーや町の商店での買い物の支払いに小切手を切っている光景をよく見かけました)

経産省としては、しわ寄せを受けやすい中小企業を商習慣の面からも守ろうということなのでしょうか。

このように長い支払いサイクルの日本では、中小・零細企業といえども資金繰りが経営の重要なテーマのひとつになってきます。

過日、終戦直後に創業した食品卸会社さんの決算書をもとに、債権と債務の回転期間を計算しました。
「だいたいこんな感じでお金が回ってますよね。取り引きが順調にいっていれば問題ないでしょうが、ほんの少しのことで支払いに困ってしまいますよね。内心ではちょっとヒヤヒヤしながら経営してませんか?」とお伺いしたところ、社長さんから「そうそう、牧野さん、そんな感じ。決算書からそんなことまでわかるんだぁ。」という答えが帰返ってきました。

この会社さんもそうですが、気にはなっていても資金繰りをきちんと管理している社長さんって少ないように思います。
以前、資金繰り表を作りたいというご相談を受けて「この規模の流通業さんでも作ってないんだ!?」と驚いたことがあります。

支払いサイクル=現金化サイクルの長い日本です。
自分の会社の資金繰り、チェクしてみてはどうですか?