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2025.10.31

社長の「人間的成長」が、会社の未来を育てる

経営者の責任は「数字をつくること」だけではありません。
アサヒグループの元会長・泉谷直木さんが語った「人間的成長こそがトップの責任」という言葉から、経営の本質を考えます。


目次

「会社はトップの器以上にはならない」
「人間的成長」とは、どんなことか
成長のために、問い続けたいこと
社長の成長が、会社の未来を育てる

アサヒグループホールディングスの元会長、泉谷直木さん。
経営の第一線を長く歩んできた方で、社長時代には経営改革を進め、アサヒビールを再び成長軌道に乗せた人物として知られています。

その泉谷さんの言葉に、こんな一節があります。

日々どれだけ人間的に成長できているか。
それがトップの重要な責任である。

経営者の責任といえば──
売上、利益、社員の生活の安定、取引先への信頼…。
数字や成果で測られるものをまず思い浮かべがちですよね。

けれど、泉谷さんは「人間的成長」こそがトップのいちばん大切な責任だと言うんです。

「会社はトップの器以上にはならない」

なぜ、社長の“人間的成長”がそれほど重要なのか。
その理由は、とてもシンプルです。

会社は、トップの器以上にはならないから。

社員は、社長の言葉や行動を通して価値観を学び、判断の基準を身につけていきます。
社長が誠実に学び、考え続ける姿を見せれば、社員も自然と学ぶ姿勢を身につけていく。

逆に、トップが学びを止めてしまえば、会社全体の成長も止まってしまう。
経営の現場でよく耳にする「社風」というのは、まさに社長の人柄や日々の姿勢の写し鏡なんですよね。

泉谷さん自身、どんなに忙しくても、現場の声に耳を傾ける姿勢を大切にしていたそうです。
経営は机の上ではなく、現場の中にある──。
その姿勢が、アサヒの再生を支えたのかもしれません。

「人間的成長」とは、どんなことか

“人間的成長”とは、知識やスキルを増やすことではありません。
それはもっと、心の成熟に近いものだと思います。

たとえば──
自分の考えを押しつけずに人の意見を受け止める力。
結果ではなく過程を大切にする心。
他人の失敗を責めず、自分の責任として引き受ける覚悟。

こうした姿勢のひとつひとつが、会社の文化を形づくっていきます。

京セラの稲盛和夫さんも、**「人間として正しいかどうかで判断しなさい」「心を高めることが経営をよくする道だ」**という趣旨の発言を数多く残されています。
経営は技術ではなく、人格の表現
トップがどんな心で日々を過ごしているかが、会社の未来を決めていくんです。

成長のために、問い続けたいこと

泉谷さんの言葉にある「どれだけ人間的に成長できているか」という問いは、
もしかすると、社長にとって最も厳しく、最も大切な質問なのかもしれません。

昨日よりも少しだけ、社員の話を丁寧に聴けたか。
昨日よりも少しだけ、感情に振り回されずに判断できたか。
昨日よりも少しだけ、誰かの立場に立って考えられたか。

その「少しずつ」の積み重ねが、会社の未来を育てていく。
成長というのは、突然やってくるものではなく、日々の姿勢の延長線上にあるのだと思います。

社長の成長が、会社の未来を育てる

経営者は孤独な立場です。
時に決断に迷い、心が揺らぐこともあるでしょう。
でも、そんなときこそ「自分は昨日よりも成長できているか」と問いかけてみる。

数字の結果だけでなく、
心の変化を見つめる時間を持つこと。
それが、会社を長く、健やかに育てる土台になるのではないでしょうか。

泉谷さんの言葉にもう一度戻ってみましょう。

日々どれだけ人間的に成長できているか。
それがトップの重要な責任である。

社長の成長が、会社の未来を育てる。
そしてその未来は、社長の“今日”の姿勢から、すでに始まっているのかもしれません。