2025.10.06
老舗とは、“何を捨てずに守ってきたか”の物語。
老舗と聞くと、「長く続いていること」そのものが価値だと思われがちです。しかし本当に問われるのは、続けるために何を選び、何を手放さずにきたのか。その判断の積み重ねではないでしょうか。330年以上続く半兵衛麩の歩みは、老舗の価値を静かに問い直してくれます。
目次
330年以上続く老舗の重み
「長く続いたことがすごいのではない」
守り抜いてきた理念と暖簾
家訓と理念だけが残った再建
変える力と、変えない勇気
330年以上続く老舗の重み
京都の老舗・半兵衛麩。その創業は1689年、実に330年以上の歴史を持つ企業です。十一代目当主の玉置辰次さんは、この長い歴史を語るとき、意外な言葉を口にします。「長く続いたことがすごいんじゃない」。
数字だけを見れば圧倒的な歴史ですが、玉置さんの視線は、もっと別のところに向いています。
「長く続いたことがすごいのではない」
玉置さんが大切にしているのは、「老舗の価値とは、長く続けるために、何を捨てずに守ってきたかにある」という考え方です。
時代が変われば、商売のやり方も、環境も、価値観も変わります。その中で、何を変え、何を変えないのか。その選択の積み重ねこそが、老舗を老舗たらしめているのだと感じます。
守り抜いてきた理念と暖簾
半兵衛麩が守り続けてきたものは、派手な戦略や巨額の資本ではありません。先義後利、正直、勤勉、節約、貯蓄。そうした価値観と、“暖簾”という名の信用でした。
戦争で商売ができなくなったときも、不正をしてまで利益を得る道は選ばなかった。家を売ってでも、ご先祖様と自分の心に恥じない選択を貫いた。その判断が、後の信頼につながっていきます。
家訓と理念だけが残った再建
戦後、再建は鍋としゃもじから始まりました。特別な資産があったわけではありません。あったのは、家訓と理念だけ。それが、最強の経営基盤だったのだと思います。
その後、商いは少しずつ息を吹き返し、いまでは年商16億円規模の企業へと成長しています。結果だけを見れば成功物語ですが、その土台には、捨てなかった価値観があります。
変える力と、変えない勇気
時代は常に変わります。顧客のニーズも、社員の価値観も、ビジネスモデルも移り変わっていきます。だからこそ、「変えないもの」があることが、企業の軸になります。
長く続く会社とは、時代に合わせて変わる力と、変えずに守る勇気の両方を持っている会社ではないでしょうか。
何があっても手放さない考え方。受け継いでいきたい想い。譲れない判断の軸。それがある会社は、どんな風が吹いても倒れにくい。時間が経っても、色褪せにくい。
理念とは、会社の“根っこ”であり、“心の灯”でもある。半兵衛麩の歩みは、そのことを静かに教えてくれているように思います。
公開・更新履歴
2025年10月6日:公開