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2023.05.14

社長を「本当の孤独」にしない人

4年ほど前のことです。ある若い社長さんから

「牧野さんってつまんないだも〜ん」

って言われたことがあるんです。その理由を聞くと、

「経営コンサルといっても牧野さんからは、お金の稼ぎ方とか儲かるネタが出てくる気がしないもん。牧野さんって、安定経営ですよね」

ということでした。

確かに私は、この社長さんが言うように、お客さんに安定した経営をしてもらいたいと考えています。

ただ、あのとき、お金の稼ぎ方や儲かるネタとの対比で「安定経営」と言われたことにちょっと引っかかりがありまして。

私だって、コロナ禍で売上が急減したお客さんの売上を数ヶ月でコロナ前の3倍以上に引き上げたこともあります。
けれども、それはお客さんの経営を基本から見直したところ、結果としてそうなったということ。
あくまでも意図していたのは、課題を解決して経営を改善することでした。

問題点を改善すれば売上を伸ばすことだってできるんです。
むしろ、売上はそうやって伸ばすべきだと思っています。

あのとき以来、ただの「安定経営」で片付けるのではなく、この私のスタンスをうまく表現する言葉をずっと探していました。

先日、東京で活動しているマーケティングのプロフェッショナルの方とzoomで話をする機会をいただきました。

この方は、私の話を聞きながら

牧野さんの考え方は、孫子の兵法に近いですね

とおっしゃったんです。

「ん?」ですよね。

この人、孫子の兵法も研究されているんです。

『兵法』というからには、勝つためのものだと思いますよね。
実は、孫子は『負けないこと』のほうにより重きを置いてるんですよ。

とのことでした。

それを聞いた私は、「そ、それですっ!」

私のコンサルティング方針が言語化された瞬間でした。

『勝つことよりも負けないことを重視する経営で、小さくても強い会社にする』

方針がこのようにはっきりとした言葉になると見えてきたことがあるんです。

それは「成功の定義」

成功を「稼いだお金の大きさ」で捉えている人もいることでしょう。
それも一つの成功の尺度です。
お金を稼げなければ事業の継続も難しくなります。

その一方で、現在の私のお客さんたちは、お金を稼ぐことも大事だけど、それよりも

「事業目的の実現」

に重きを置いている人たちばかりだなぁ、と。

「事業目的の実現」こそが
 お客さんと私が共有している成功・ゴール

なんだと気づいたんです。

ここまでわかってきたところで先日、コメダ珈琲でモーニングしながらお客さんと打ち合わせして、そのまま一緒にランチしたんです。

食べ終わった後、コーヒー飲みながらそのお客さんと雑談しているときに、先述のコンサルティング方針と成功の定義を話をしたんです。

そうしたら、そのお客さんが大きくうなずいて

牧野さんに何かしてもらおうとか、成果を求める人は、間違ってる

って言うんです。

「どういうこと?」

毎回、あれこれ話して、牧野さんに私の頭の中を整理してもらう。
そしたら問題点が見えてきて、一緒に対策を考える。
対策が決まったら、牧野さんが私のやるべきことを細かく分解して整理してくれる。

そうしたら、あとは、私はやるだけ。

牧野さんがこうやって整理してくれることに、私は高いお金を払う価値があると感じてるから。

と言ってくれたんです。
だから牧野に何かやってもらおうとか、成果を求めるのは間違っている、ということでした。

経営しているのは私。
だから、整理してくれたことをやるのは私。
やって結果を出すのも私。
牧野さんじゃないもん。

私の価値をこれほどまでに理解してくれている人が目の前に座っていることに、コメダ珈琲で泣きそうになりました。

<私が提供する価値>
1. 頭の中を吐き出す。
2. 頭の中が「整理される」
3. 課題が見える。
4. やるべきことが「整理される」
5. あとはやるだけ、になる。

このエピソードを大阪のある女性社長に話したところ

牧野さんは社長を孤独にしない人よね。

と言われたんです。

社長は孤独、って言われるでしょ。
最後は一人で決めなきゃならないからだとかという理由で。

でも社長の『本当の孤独』は違うのよ。

社長の『本当の孤独』っていうのは、アウトプットできないこと。

社長だったら、いろんな情報をたくさんインプットしてるはず。
でも、アウトプットできない、ってことが『本当の孤独』なのよ。

あふれかえる情報をインプットして、あれこれと考え込んでごちゃごちゃなった頭の中を全部吐き出して、整理すること。

これが私がいうアウトプット。

とはいえ、一人ではなかなかできるもんじゃないでしょ。

相手が必要。

ただ吐き出すだけの相手なら、社長なら周りに何人もいると思う。

だけど、的確に整理までしてくれる人なんてなかなか見つからない。

だから社長は孤独なの。
これが社長の『本当の孤独』

コメダで泣きそうになってわかったじゃない。
牧野さんは、社長を『本当の孤独』にしない人。
社名のとおり、社長に寄り添う人。

と一気に話してくれました。

牧野は、社長を「本当の孤独」にしない人

いま、世の中に情報は溢れかえっていて、スポーツやビジネスに限らず、その世界では一流と言われる人たちが動画で詳しく解説してくれる時代です。
それも無料で、しかもカンタンにアクセスできます。

そう考えれば、監督なんかよりはるかに優秀だとか感覚を持ってる人間のアドバイスを一瞬で手に入れられるんですよ。

こう語るのは、2022年夏の甲子園で真紅の優勝旗をはじめて東北にもたらした仙台育英高校の須江監督。

須江監督ご自身は高校時代にマネージャーに転向し、選手経験はほとんどありません。
にもかかわらず、強豪校の監督としてその手腕が注目され、すでに3冊もの著作があります。

大量にあふれかえる質のいい情報に生徒がいつでも触られる現代においては、高校野球の監督自身にも変化が求められるのでしょう。

だから監督の役割っていうのは、もうカリスマ的に何かを指導したりするものでもないし、思考の交通整理をするのが監督の役割なんですよ。

情報が多すぎる時代なので、その多すぎる情報を一緒に整理してあげるんですよね。

変化が激しい情報過多の現代。
高校球児であっても、社長であっても、必要とされるのは、須江監督のように
「一緒に整理する人」
なんだと思います。

プロフィール経営理念実績二代目にならなかった物語