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経営と思想

経営と思想

何年か前のことです。 人口1,000人ほどの沖縄の小さな島で、「離島の資本主義」を持論に奮闘されている社長さんがいます。もうすぐ70歳を迎えようというお歳です。経済産業省から「はばたく中小企業・小規模事業者300社」にも選ばれました。 この島へは日帰りができず、一泊しなければなりません。泊まれば島に数軒しかない居酒屋の一つで、その社長さんと二人で飲むのがこの離島出張中の密かな私の楽しみでした。また、社長さんが仕事で本島へやって来て泊まるときなんかも、会食の予定がキャンセルされたときなど、代打としてお声がかかります。 飲みながらこの社長さんが何度も口にしていたのが 牧野さん、仕事には思想がなければダメだよ、思想。牧野さんの思想は何? でした。 「普通にあるものがない」という離島の厳しい経営環境で、小さな企業がどうやって生き延びていけばいいのか悪戦苦闘しながら模索してきたこの社長さんの経営には、民俗学に造詣が深いことも相まって、なんというか思想性を感じていました。 そうした経営の中から生まれたであろう「離島の資本主義」にもそれを感じていた私は、事業や経営といったところから離れた人生論的な問いかけかと思っていたんです。 その社長さんと飲むときはノートにメモしながら飲んでいたので、「思想」と大きく書いてグルグルと○で囲ったのですが、そのノートもどこへ行ったのか。 ところが、昨日の新聞のコラムに、本田宗一郎さんのこんな言葉が掲載されていました。 社の連中に話をするのはみな、技術の基礎になっている思想についてである。すぐに陳腐化してしまう技術はあくまで末端のことであり、思想こそ技術を生む母体だ。 社員から「オヤジ」と呼ばれ、作業服姿の似合う「技術屋」のイメージが強い方なので、意外でした。 「思想」とは今なら・パーパス(存在意義)・ミッション(使命)・ストーリー(物語)に相当するだろう、とコラムの執筆者は解説しています。 あの社長が私に問いかけていたのは、こういうことだったんでしょうかね。

仕事の引き継ぎにとって大切なこと

仕事の引き継ぎにとって大切なこと

設立して10年、20年と経過した会社には、昔から引き継がれてきている仕事がたくさんありませんか? ・退職した人から引き継いだ仕事・前任者から引き継いだ仕事 といったものです。心当たりありますよね。 でも、その仕事がなぜ存在するのか理由を説明できますか?その仕事の目的といってもいいでしょう。 そして、その仕事、いまでも必要なものですか? 創業20年を超える沖縄県内の小売業さん。POSレジを導入して売り場業務の効率を高めていました。でも、なぜか閉店後のレジ締めにとても時間がかかってる。そのために毎日毎日、売り場の全員が残業することに。 レジ締めの業務を分析してみると、その原因は、たった一つの集計項目のために30分も費やしていたためだと判明しました。 その項目とは、創業当初から20年以上も続いている集計項目。それだけがPOSレジでは集計されず、電卓をたたいて集計していたんです。 なぜ、その集計項目が必要なのか。その理由を探っていくと... 先代の経営者が、創業後しばらくして集計を命じて毎日報告させていた項目だそうです。しかし、その後の経営環境の変化で必要性がどんどん薄れ....二代目にバトンタッチされた現在では、完全に不要な項目だとわかりました。 すぐに二代目から先代に対してお伺いを立ててもらい、即日その項目の集計業務は廃止となりました。 おかげで毎日のレジ締めが早く終わり、従業員のみなさんも残業をせずに早く帰れることに。 社歴の長い会社の社長さん、特に先代から経営のバトンタッチを済ませている社長さんは、昔から続いている仕事が現在も必要かどうかチェックしてみてはどうでしょう。 さらに、仕事を引き継ぐときは、その仕事が必要な理由、目的についても引き継ぐことをオススメします。

現場重視が生み出す風土とは?

現場重視が生み出す風土とは?

沖縄は先週の終わりに梅雨が開けて、夏らしい天気になってきました。海からの気持ちいい風が部屋の中を吹き抜けていきます。はやく入道雲が見たいですね。 先週といえば、三菱電機の不祥事がまた明るみに出ました。今回の不適切検査はもう35年以上続く組織的な行為だそうです。不適切検査や品質問題が度重なる様は、風土と言われても仕方がないものでしょう。 組織的な隠蔽を生み出す企業風土が生まれる背景については、ここでも何度かご紹介してきました。 ところが三菱電機のケースついて新聞の報道を読んでいると、事業部門が強い権限を持ち経営トップの目が行き届かない、ということが原因に挙げられています。 三菱電機は、原子力発電などの重電からエレベーターなどのビルシステム、数値制御装置などの産業用、情報通信システム、半導体、さらには家電製品まで幅広く手掛ける総合電機メーカーです。 あまりにも幅が広すぎて経営トップの目が行き届かないということでしょうか。それぞれの技術が違いすぎて専門性が高く、縦割りを生み、それが事業部の権限を強めてしまったのでしょうか。 財閥のような巨大企業のことだから中小企業の私達には関係ない、なんて思わないでください。 中小企業といえども技術者や現場の意見が強すぎる会社も気をつけたほうがいいのではないでしょうか。「オレは技術のことはよくわからん。あいつらに任せてる」と、ずっと営業で会社を引っ張ってきた社長さん。「父が創業したときから長年会社を支えてくれた職人さんたちだから」と自分よりはるかに年上の技術者さんたちが現役で支える会社の二代目社長さん。 これからもそうした風土を続けますか?技術者への信頼や会社への貢献度とガバナンスは別の話だと思います。

社長の一挙一投足に潜むリスク

社長の一挙一投足に潜むリスク

業者さんへの態度で損をしかねませんよ。社員の業者さんへの態度は、会社の風土ですよ。なんてことを2回にわたって書いてきました。 では、社風っていうのはどうやって作られるんでしょう? オックスフォード大学のチャールズ・オライリー教授がは、組織文化についての数多くの研究で論じられていることを整理して、こう述べています。 組織文化は、主に上級幹部が持っている価値観と行動を反映している これは「会社の風土は、会社の幹部が持っている価値観と行動を反映している」と読み替えることができるでしょう。 会社の幹部が決める経営方針、事業計画、社内規範、幹部が行う経営判断、社員への指示、幹部たちの発言、行い、態度、といったものが会社の風土になって行くようです。 経営幹部といっても中小企業となると、ほとんど社長一人で物事を決めているのではないでしょうか。 ではれば、社長の一挙一投足が会社の社風になっていくといってもいいですね。 ★ チャールズ・オライリー教授の先ほどの分析には続きがあります。 組織文化は、企業の業績を決定する重要な一因となる だそうです。社長の一挙一投足は、会社の風土になり、会社の風土は、業績を決定する重要な一因です。 つまり、社長の一挙一投足は、業績に影響しますよ。

損をしかねない残念な習慣

損をしかねない残念な習慣

前回は、業者さんに接する態度によっては損をする、という内容でした。 でも、なぜそんな接し方になってしまうんでしょう? ★ まだ、コンサルティング会社に入る前のこと、システムエンジニア時代です。あるお客さんのところへ行っているチームから応援要請がありました。業界ではトップのメーカーさんです。契約上は「自社でやるから対象外」としていた分野について、自分たちでやってみたら難しかったから担当者を入れてほしいということでした。しかも無償で。 お客さんのところへ行ってみると、この会社の情報システム部の方々は若手から中堅・ベテランまで「業者をイジメるのが仕事」と思っているんじゃないか、と思ってしまうぐらい。私が到着するなり、まだ20代半ばぐらいの担当者が態度は横柄だし「なんで早くこなかったんだよ」って感じでネチネチと言葉で威圧にかかってくる。となりのブースで打ち合わせていたウチの課長もネチネチとやられていました。 これが連日なんですよ。 「必要ないと言っていたのに、自分たちじゃできないからなんとかして欲しいとお願いしてきたんだよね。なのにこちらが悪いと言わんばかりのこの対応ってどういうこと?」 私もまだまだ若かったですらね。「あんたたちがそう来るなら、こちらもそのようにさせてもらいますよ」って感じで。 さすがにマズイと思ったのでしょう、部長さんが登場しました。でもお話をしていると、部長さん自らが部下の人たちに業者さんに対するこういう扱いを教育しているんだな、というのを感じました。 私としてはそのような方々とは一緒に仕事はしたくないですから、2ヶ月ぐらいかけて必要最低限のことはやって帰ってきました。「お約束にはなかったことを無償でここまでやりました。スキルトランスファーもしました。あとはお約束どおりご自分たちでお願いします。」と。 ★ それより少し前、業界2位の金融機関の情報システム子会社にいたときのことです。社内をのっしのっしと肩で風切って歩き、社員に横柄な態度で接する二人組がいました。親会社の「システム企画課」という部署の社員です。 あまりにもその横柄な態度が板についているので、二人とも40代の課長と課長代理ぐらいだろうとみんな思ってました。親会社から子会社へ出向してきている若い社員までもが。 ところが、その若い出向社員がその二人組のことを同期の友人に話したら、友人が二人組の若い方を「アイツ」呼ばわりするんだそうです。理由を聞いたら、まだ入社2年ちょっとの後輩なんだとか。 結局、二人ともまだ20代の主任と平社員だと判明しました。「20代であんなに老けて態度もあんなにデカくなっちゃうんだ!?」とみんな驚愕。 金融機関は情報システムに多大な投資をしています。どんなシステムをどれくらいの予算をかけて導入するか立案して決定しているのが二人組の所属する「システム企画課」だったんです。 あの頃の民間企業では、コンピューターは同じメーカーさんで統一しているのが一般的。この金融機関のコンピューターは「お客様の言うことは絶対」を貫くダークスーツ集団。このメーカーさんにとって自分たちの売上を決めているといっても過言ではないのが、システム企画課。システム企画課の社員に対する彼らの接し方はものすごいんだそうです。 あの二人組の年齢の話題で盛り上がっていた私たちに「だからあの部署はああいう勘違い社員を短期促成&量産しちゃうんだよね」と親会社のベテラン社員さんが教えてくれました。 ★ 自分たちが損をしかねない業者さんへの態度。組織風土が作り出しているのがおわかりいただけましたか?ご紹介したのは大企業の一部の部署の例ですので、中小企業なら会社の風土そのものかもしれませんよ。