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沈んだお金

沈んだお金

前回の続きです。 10年前にパナソニックに吸収されることで消滅した三洋電機という会社。経営再建をめざして8000人のリストラに携わるなど、経営を間近で見てきた元人事部長さんが漏らしていた一言。 「ダメだな」と思ったら合理的にやめる事業はやめる ダメだな、と思っても合理的に止められない理由の一つが前回の「情実・忖度」でした。 もう一つが、サンクコスト。埋没コストとも言われます。サンクとは、沈むを意味する英語の動詞 sink の過去分詞形 sunk。「救いようがない」という意味もあるようです。事業に投下してしまったものの、もう取り返すことのできない費用のことです。 設備や不動産などは売却して取り返すことができるでしょうが、そこまでにかかった人件費や家賃などは取り返すことができないですよね。それを「これだけお金をかけたのだから」と回復の見込みのない事業をダラダラと続けるうちに傷口を広げて倒産してしまったという例はよく聞きます。三洋電機の元人事部長さんが指摘しているのは、そのことでしょう。 お金は取り戻せるが、時間は取り戻せない。 という一言をどこかで読んだことがあります。 ある事業に投下したお金は、その事業からはもう取り返すことができなくても、他の事業で稼ぐことで取り戻すことができます。けれども、これまでその事業にかけた貴重な時間はもう二度と戻ってきません。 そのまましがみつくか、早く見切りをつけて次に賭けるか。 まさに、経営判断です。 この投稿はメールマガジンでもお届けしています。ぜひご購読を。「経営者のためのメールマガジン」ご登録はこちらから。https://banso-sha.jp/news/magazine_subscribe/

やめたくてもやめられない

やめたくてもやめられない

前回(https://banso-sha.jp/blog/20210412/)の続きです。 10年前に事実上の消滅をした三洋電機。末期に行われた経営再建で、8000人ものリストラをしなければならなかった当時の人事部長さんは、もう二度と人事の仕事はしないと誓い、現在は回転寿司チェーンの広報をされています。 従業員10万人を抱える会社が消滅するのを経営陣のすぐ近くで見てきたこの元人事部長さんは言います。 「ダメだな」と思ったら合理的にやめる事業はやめるとか。情実的なものとか、妙な忖度があると歪んでくる。 情実的とか、妙な忖度といったものは「あの人が始めた事業だから私が勝手に止めるわけにはいかない」といったものです。事業のような大きなレベルの話に限らず大企業では、レポートや社内ルールといった細かいレベルのものでも様々な「あの人が担当者のときに始めたものだから止められない」があります。最初に始めた人がすでに課長とか部長になっていたりすると、もう廃止できる可能性は限りなくゼロに近づきます。 こうした廃止したほうがいいのに廃止できない場合のコストって、かなりデカイんですよ。・すでに必要性をなくした作業にかける人件費・すでに必要性をなくしたルールによる低い生産性・すでに必要性のない機能をシステム導入時に追加する開発費と維持費 こうやって並べてみると経営者のあなたなら怖くなりません?でも、現場の人たちは金額に換算して考えるなんてことは稀だと思います。すでに偉くなった人に楯突いて面倒なことになるよりも、ちょっとガマンすればいいだけですから。 こういうの、大企業だけだと思ってるでしょ...小さな会社でも見かけますよ。 この投稿はメールマガジンでもお届けしています。ぜひご購読を。ご登録はこちらから。https://banso-sha.jp/news/magazine_subscribe/

リストラは麻薬

リストラは麻薬

三洋電機って会社があったこと、ご存知ですか?私の世代なら、ダックスフントの「おしゃれなテレコ U4」がすぐに思い浮かぶと思います。(当時のCMはこちら)むかしのテレビはガチャガチャとチャンネルを回したものですが、これをリモコンで回す「ズバコン」を開発したのもサンヨーでしたね。近年では電池の技術力が高く「エネループ」なら若い方もご存知ではないでしょうか。時代の先駆的な商品を開発して世に送り出してきた印象を持っています。 しかし、その三洋電機も10年前にPanasonicに吸収されました。当時約10万人いた従業員のうち、Panasonicに雇用されたのは9700人あまりだったそうです。事実上の消滅です。 先日、三洋電機の元社員さんたちのその後を伝える番組を見ました。三洋電機の末期、経営再建のために8000人規模のリストラをしなければならなかった人事部長さんは、もう二度と人事の仕事はしないと誓い、現在は回転寿司チェーンの広報をされています。 その方が、あの当時を振り返ってこうおっしゃっています。 リストラは麻薬的なもので、人を減らしたら固定費が減るのでその時は業績が良くなる。けれども、中期的に見ると会社の体力そのものを奪っていく。結構きつかった。このままでいいのかと。 会社は人が財産とよくいわれますね。経営状態悪化の徴候が現れたり早期退職を募ると、転職先の見つかりやすい優秀な人や技術を持っている人から辞めていくのもまた事実です。牧野がかつて勤めていたIT企業でもそうでした。「中期的に見ると奪われる会社の体力」とはそのことを指すのでしょう。 * この投稿はメールマガジンでもお届けしています。ぜひご購読を。<メールマガジンご購読のご案内>

人材を見つける人材

人材を見つける人材

昨日は、一般社団法人 琉球フィルハーモニックさんとの初回打ち合わせでした。クラッシック音楽のファン、ひいては琉球フィルのファンを広げていくお手伝いを、伴走舎がさせていただくことになったんです。そのための戦略をご提示したところ、ご賛同いただけてひと安心。なにしろクラッシック音楽はド素人。その案を気に入ってもらえなかったらどうしようかとドキドキでしたから。 今年のNHK大河ドラマは渋沢栄一。日本の資本主義の父。現在の埼玉県深谷市の農家の長男として生まれ、若い頃は尊皇攘夷思想に傾倒し、横浜で外国人を斬り殺すテロも計画して実行寸前まで準備していたというから驚きです。でも、そんな人が後に一橋家に仕官したというからさらに驚きです。 一橋家への仕官をオファーしたのが慶喜の重臣である平岡円四郎。この人は開明派ですが、栄一の持つ思想面を問わずにその能力に日頃から目をかけ、栄一の窮地を救う形で仕官を持ちかけました。 一橋家へ仕えてからの栄一は、その能力を開花させ短期間にどんどんと出世します。やがて慶喜が将軍になったことで、かつて倒そうとしていた幕府の役人に自分自身がなってしまったことを栄一は悲嘆したようですが、フランスへの派遣を命ぜられるという幸運に恵まれます。このフランスでの見聞が、日本資本主義の父となる栄一の活躍の基礎になりました。 渋沢栄一が飛躍へと向かう扉を開いたのは平岡円四郎だと、歴史学者の磯田道史さんは言います。でも、一橋家にとっては危険思想を持つ栄一を平岡円四郎はなぜ仕官させたのか? 当時の一橋家の状況は、とにかく能力のある人材を一人でも多く必要としていたんだそうです。平岡円四郎にとしては、まず能力、思想は後からなんとでもなる、ぐらいの自信があったのだろうとのことです。 歴史の研究者は、いってみれば人や社会が繰り広げた成功と失敗の研究者。その磯田道史さんは解説します。 人材を見つける人材。そういう人がいないと、年功ぐらいでしか人を登用せざるを得ず、組織や社会は衰退していってしまう。 あなたの会社にとって、人材を見つける人材は誰ですか?

ビシッと決めたいクイックスタート!

ビシッと決めたいクイックスタート!

若い頃、私にとって牛丼のベンチマークは吉野家。もう、絶対王者でした。 30年前の吉野家で、新人バイトに先輩バイトが仕事をいろいろと教えているところを何度か見かけたことがあります。先輩バイトの教え方にも良し悪しがあって、「こんな先輩の下についた新人バイトは仕事を覚えるまで時間がかかるだろうなぁ」と思ったこともありました。今では吉野家にもマニュアルが用意されていると思いますが。 マニュアルは作るのが面倒でしょうけど、一旦作ってしまえばこんな便利なものはありません。 マニュアルの効果の一つは、バイトさん、社員さんに関わらず、新人さんに早く仕事を覚えてもらうということです。給料を払っているわけですから、一刻も早く仕事を覚えて戦力になってほしいですよね。 コンサルティング会社でもそうでした。即戦力として期待されて中途入社した人たちは、すぐにプロジェクトに送り込まれるのですが最初はなかなか仕事が進まない。特にコンサルティング業界の外から転職してきた人たちが。 なぜだろうとインタビューしてみると「仕事の進め方で戸惑っている。他の人たちはどうやっているのか」と何人もの人から質問さてしまう。これだ!と。 そこで、比較的経験豊富なメンバー3人で集まってメソッドを作りました。プロジェクトの最初から最後までをどう進めていくかを体系化してまとめたわけです。ある頭文字をとって「TIGER1」と私が命名しました。 このTIGER1によって中途入社した人たちのクイックスタートが可能になりましたし、若い人たちにとっても経験不足を補うことができました。退職して沖縄に引っ越してからも「牧野さん、あれ、参考にしていますよ」とかつての後輩たちに言われます。 あなたの会社の新人さん、クイックスタートを切れてますか?