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組織に働く慣性の力

組織に働く慣性の力

中小企業にお勤めの方からこんな相談を受けたことがあります。 社員:実は会社でこんな問題があります。   考えた解決方法はこうです。   牧野さん、どう思います? 牧野:それ、やってみる価値はありますね。   けど、全社で取り組む必要ありますよ。 社員:だから止めておきます。 牧野:え!?社長の了解もとれてるのに、   どうしてですか? 社員:最初はみんな賛成するんですけど、   結局言い出しっぺに押し付けるんです。 牧野:どういうことですか? 社員:ウチの社長は、うまくいっても   褒めることもせず何も言わないけど、   失敗すればグダグダ言うんですよ。 牧野:ありゃまぁ。困った社長さんですね。 社員:だからみんな、現状を変えるのが   イヤなんです。新しいことを始めると   みんな、反対意見ばかり言って   つぶそうとするんです。 牧野:確かに、新しいことやって叱られるなら、   何もしないで何も言われないほうがいい。   社内の雰囲気はそうなってきますよね。 社員:ウチの会社はこれまでずっとこの繰り返し。   だから、現状を変えようとした   勇気ある人はみんな辞めていって、   現状維持を望むやる気のない人だけが   会社に残っているんです。 これ、組織に働く「慣性の力」です。 組織が一旦ある方向に進み始めると、それを変えるのに相当な力が必要になります。大きな組織になれば、なおさらです。 組織に働く慣性の力の威力を知るのにちょうどいいエピソードがあります。 出典を思い出せなくて申し訳ないのですが、サルを使ったこんな実験の話を聞いたことがあります。 実験室に5匹のサルを入れて生活させます。天井の中央からはバナナを吊るしてあり、引っ張ると上から熱湯が降ってくるという仕掛けにしておきます。 そのバナナを取って食べようとして熱湯で散々な目にあった5匹のサルはいずれ全員バナナを取ろうとしなくなります。 その頃を見計らって1匹だけ実験室内のサルを入れ替えます。新入りのサルAは天井からのバナナを見つけ、取って食べようとしますが、古株の4匹のサルが必死に止めます。 古参のサルから止められるのを繰り返すうちに、新入りAもいずれバナナを取らなくなります。バナナを取るとどうなるかを経験していないにも関わらず。 そこでまた、古株のサルをもう1匹入れ替えます。新入りのサルBは当然バナナを取ろうとしますが、またも残りのサルは必死で止めます。驚いたことに、バナナを取ると何が起きるかをまったく知らない先ほどの新入りAも一緒になって止めるんです。 こうして新入りBも、理由がわからないままバナナを取らなくなります。 さらにまた、古株のサルをもう1匹入れ替える・・・ これを繰り返して、古株が1匹もいなくなり、実験室の中のサルが新入りA〜Eにすべて入れ替わったとき、新たに新入りFを入れると、バナナを取るとどうなるかを知るサルはすでに1匹もいないのにもかかわらず、新入りFがバナナを取ろうとするのを他のサルが全員で止めたそうです。 あなたの会社にも、組織の慣性の力が働いているはずです。

社長、裸の王様になってませんか? 〜 裸の王様の共通点

社長、裸の王様になってませんか? 〜 裸の王様の共通点

「裸の王様」を辞書で引くと、「高い地位にあって周囲からの批判や反対を受け入れないために、真実が見えなくなっている人のたとえ」とあります。 私が若かりし頃、配属された新設部門の部長はまさに裸の王様でした。王様の周りの課長は、いわゆるイエスマンで固める布陣。 裸の王様が治める王国で働く兵士は悲惨です。 当時、結婚して子供が生まれたばかりの私は、コンサルティング会社へ転職しました。 このときの部長に限らず、裸の王様になってしまった偉い人、何人も見てきました。 私が見てきた裸の王様に共通するのは、悪い情報を拒絶すること。 部下から上がってくる悪い情報に対して叱責するだけで、その原因を探り、対策を立てようとはしません。 部下が原因について述べようものなら、それを言い訳と受け取ります。 これを繰り返していくうちに部下から悪い情報は上がらなくなり、裸の王様の出来上がりです。 現実が見えなくなってしまうので、状況悪化の本当の理由がわからず、的外れな対策を命令しつづけ、部下は疲弊し、組織は衰退していきます。 社員にとって社長は生殺与奪権者です。社員にも生活があります。つまり、社長の怒りに触れることは、家族の生活を危険に晒すことになります。 したがって、社長はよほど注意しないと裸の王様になりかねません。 あなたは大丈夫ですか?

あなたの会社の売上計算式は?

あなたの会社の売上計算式は?

先日の「組立て式の目標」の話題の中で売上の計算式について取り上げました。 例として、① 商品単価 × 数量② 1日の平均売上 × 営業日数を挙げましたね。 実は、もっと大事だと私が思う計算式があるんです。飲食業や小売業では、これが主流です。 それは、  売上 = 客数 × 客単価 スーパーやコンビニはこれを中心に考えているといえるかもしれません。 店内の売り場の配置からコーナーの配置、棚上の商品配置にいたるまで、すべては「客数と客単価を少しでも上げるため」です。 この計算式に切り替えると、考え方も変わってきます。 一人でも多くのお客様に買ってもらうにはどうしたらいいのか。 一人のお客様に1円でも多く買ってもらうにはどうしたらいいのか。 ほら、商品やサービス中心の考え方からお客様中心で考えるようにしなければならなくなりますよね? 経営計画の実行結果を評価する上でも、売上目標 = 目標客数 × 目標客単価の式で立てておくと、 売上が目標に届かなかったとき・客数が悪かったのか・客単価が悪かったのかを調べればいいことになります。 客数が目標に届いていなければ、なぜ購入されたお客が少なかったのか? 客単価が目標に届いていなければ、なぜ一人あたりの購入金額が少なかったのか? つまり、「お客様の購買行動を探る」ことになりますよね。 あなたの会社の売上計算式はどうですか?

戦略的な事業展開を目指す社長、あなたの会社の「ドメイン」は何ですか?

戦略的な事業展開を目指す社長、あなたの会社の「ドメイン」は何ですか?

4月1日、新年度の始まりです。 事業戦略をもとに立案した新年度経営計画のスタートですね。 ところで、事業戦略・経営戦略の重要なパーツである「ドメイン」を知っていますか? 「ドメイン」とは事業領域とも呼ばれ、自分の会社の事業はいかにあるべきかを示す、いってみれば「ウチの会社の生存領域はココ!」といえるものです。 このドメインが「将来の事業展開における発案のベース」となるんです。 どういうことかというと... 例えば、お笑いの吉本興業。 吉本吉兵衛・せい夫婦が明治45年に、大阪にある一軒の寄席小屋を入手して、寄席の経営を始めたのが始まりです。 現在ではみなさんもご存知のとおり、吉本興業(株)を持株会社とした、エンターテイメント産業界を代表する企業グループです。 では、吉本夫妻が自らのドメインを「うちらの商売は寄席」のようにしていたら、現在のようなエンターテイメント分野で広範囲に事業展開する吉本興業の姿はあったでしょうか。 吉本せいをモデルにした連続テレビ小説「わろてんか」をご覧になった方はおわかりかと思いますが、「人を笑顔にしたい」という気持ちが、二人が寄席経営に乗り出すきっかけとして描かれています。 「人を笑顔にする」これが、吉本のドメインだったのでは。だからこそ、あれだけの企業グループに成長したのではないでしょうか。 ちなみに、吉本興業の理念の一節に「私たちにとって、お客さまは、(略)一緒にこの世界を笑顔があふれる場所にしていく仲間なのです。」とあります。 さて、ここに出てきた2つのドメインは「寄席」は物理的ドメイン「人を笑顔にする」は機能的ドメインにそれぞれ分類されます。 物理的ドメインはその名のとおり、「モノ」を中心に事業を発想します。 明確でわかりやすい反面、事業活動の展開範囲が狭くなり、現在の事業を超える発想が出にくい、というデメリットがあります。 機能的ドメインは「コト」「顧客ニーズ」を中心に発想するドメインです。 将来の発展の可能性を感じさせる、というメリットがありますが、抽象的になりすぎて事業の性格がぼやけやすい、というデメリットがあります。 このように、将来の戦略的な事業展開を考えるとき、あなたの発想に影響を与えるドメイン。 年度始めの今日、あなたの会社のドメインを再チェックしてみてはいかがでしょうか。

経営理念とは、経営者の「世界の見え方」を伝える言葉

経営理念とは、経営者の「世界の見え方」を伝える言葉

会社の現場を訪れるたびに感じるのが、経営の「土台」は理念にあるということです。経営理念は、単なるスローガンではなく、経営者の“世界の見え方”を言葉にしたもの。この記事では、有名企業の理念を例に、理念がどのように組織を動かす力を持っているのかを考えます。 目次 経営理念は会社の「土台」有名企業の理念に見る“らしさ”理念の共通点は「経営者の世界観」理念が生きている会社・曖昧な会社経営者が持つべき問い 経営理念は会社の「土台」 経営相談やプロジェクトでさまざまな会社を訪れる中で、改めて感じるのは、会社の土台となるのは「経営理念」だということです。 経営理念を掲げている社長さんも多いでしょう。“企業理念”、“社是”と呼ぶ会社もありますね。いずれも、会社の存在理由や大切にする価値観を表す言葉です。 有名企業の理念に見る“らしさ” 有名企業の理念を見てみると、経営者の個性や価値観がはっきりと表れています。 ◆ ZOZO 世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。 読むだけでワクワクするような開放的な世界観。まさに創業者の価値観がそのまま息づいています。 ◆ Amazon 地球上で最もお客様を大切にする企業 「地球上で」という圧倒的なスケール感。カスタマーサポートの徹底ぶりにも、この理念が生きています。 ◆ CoCo壱番屋(壱番屋の社是) ニコニコ・キビキビ・ハキハキ 店舗に入った瞬間の空気感そのもの。理念が従業員のふるまいにまで落ちているのが伝わります。 理念の共通点は「経営者の世界観」 こうして理念を並べてみると、共通点が見えてきます。それは―― 経営者の“世界の見え方”を、お客様・従業員・ステークホルダーに言葉で示している。 理念はキャッチコピーではありません。会社が何を大切にし、どうありたいかという「判断の軸」です。 理念が生きている会社・曖昧な会社 これまで訪れた会社を見ていても、理念が生きている組織は意思決定が速く、社員の行動が自然とそろっています。 逆に理念が曖昧な組織では、場面ごとに判断基準が揺らぎ、迷いが生まれやすい。理念とは、経営者の世界観を共有するための最初の言葉なのです。 経営者が持つべき問い だからこそ、経営者にはこんな問いが大切になります。 「誰に、どんな世界観を伝えたいのか?」「その言葉は、あなた自身が本当に信じているものか?」 あなたの会社の経営理念は、誰に、どんな価値観や姿勢を伝えようとしていますか?そしてその言葉は、今のあなたの“世界の見え方”を確かに映していますか? 🪶まとめ 経営理念は会社の「判断の軸」 理念には経営者の世界観が表れる 理念が生きている組織は、意思決定と行動が速い 経営者自身の信じる言葉を理念として磨き続けよう 2019年:公開/2025年11月16日:加筆・再構成