2019.04.10
組織に働く慣性の力
中小企業にお勤めの方からこんな相談を受けたことがあります。 社員:実は会社でこんな問題があります。 考えた解決方法はこうです。 牧野さん、どう思います? 牧野:それ、やってみる価値はありますね。 けど、全社で取り組む必要ありますよ。 社員:だから止めておきます。 牧野:え!?社長の了解もとれてるのに、 どうしてですか? 社員:最初はみんな賛成するんですけど、 結局言い出しっぺに押し付けるんです。 牧野:どういうことですか? 社員:ウチの社長は、うまくいっても 褒めることもせず何も言わないけど、 失敗すればグダグダ言うんですよ。 牧野:ありゃまぁ。困った社長さんですね。 社員:だからみんな、現状を変えるのが イヤなんです。新しいことを始めると みんな、反対意見ばかり言って つぶそうとするんです。 牧野:確かに、新しいことやって叱られるなら、 何もしないで何も言われないほうがいい。 社内の雰囲気はそうなってきますよね。 社員:ウチの会社はこれまでずっとこの繰り返し。 だから、現状を変えようとした 勇気ある人はみんな辞めていって、 現状維持を望むやる気のない人だけが 会社に残っているんです。 これ、組織に働く「慣性の力」です。 組織が一旦ある方向に進み始めると、それを変えるのに相当な力が必要になります。大きな組織になれば、なおさらです。 組織に働く慣性の力の威力を知るのにちょうどいいエピソードがあります。 出典を思い出せなくて申し訳ないのですが、サルを使ったこんな実験の話を聞いたことがあります。 実験室に5匹のサルを入れて生活させます。天井の中央からはバナナを吊るしてあり、引っ張ると上から熱湯が降ってくるという仕掛けにしておきます。 そのバナナを取って食べようとして熱湯で散々な目にあった5匹のサルはいずれ全員バナナを取ろうとしなくなります。 その頃を見計らって1匹だけ実験室内のサルを入れ替えます。新入りのサルAは天井からのバナナを見つけ、取って食べようとしますが、古株の4匹のサルが必死に止めます。 古参のサルから止められるのを繰り返すうちに、新入りAもいずれバナナを取らなくなります。バナナを取るとどうなるかを経験していないにも関わらず。 そこでまた、古株のサルをもう1匹入れ替えます。新入りのサルBは当然バナナを取ろうとしますが、またも残りのサルは必死で止めます。驚いたことに、バナナを取ると何が起きるかをまったく知らない先ほどの新入りAも一緒になって止めるんです。 こうして新入りBも、理由がわからないままバナナを取らなくなります。 さらにまた、古株のサルをもう1匹入れ替える・・・ これを繰り返して、古株が1匹もいなくなり、実験室の中のサルが新入りA〜Eにすべて入れ替わったとき、新たに新入りFを入れると、バナナを取るとどうなるかを知るサルはすでに1匹もいないのにもかかわらず、新入りFがバナナを取ろうとするのを他のサルが全員で止めたそうです。 あなたの会社にも、組織の慣性の力が働いているはずです。