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はじめに補助金ありき。はじめに節税ありき。

はじめに補助金ありき。はじめに節税ありき。

「補助金が使えるなら」「節税になるなら」――そんな言葉から始まる相談を、これまで何度も耳にしてきました。補助金や節税は経営にとって大切な手段ですが、それを“主語”にして意思決定をしてしまうと、会社の未来を誤った方向に導いてしまうことがあります。この記事では、実際の相談事例を交えながら、経営判断における「得の優先順位」について考えます。 「補助金ありき」の落とし穴「節税ありき」が招く判断ミス経営の主語を取り戻す「得の優先順位」をどう決めるか 「補助金ありき」の落とし穴 経営相談の現場では、こんな会話に出会うことがあります。 「事務所に看板をつけたいんだけど、補助金もらえる?」「どんな看板なら対象になるの?」「ダメか……じゃあチラシはどう?」 補助金を使うこと自体は悪いことではありません。むしろ、正しく使えば会社の成長を後押しする重要な資金源になります。 ただし、「まず補助金ありき」で考え始めると意思決定の軸が狂う。 補助金には自己負担もあります。であればこそ、“自分のお金を使うつもりで、本当に必要な投資かどうか”を冷静に考えることが欠かせません。 補助金が出るからやる、ではなく、「やるべきだから、その一部に補助金を活用する」。この順番が逆転したとき、経営は迷い始めます。 「節税ありき」が招く判断ミス 同じようなことは、節税でも起きます。 かつて、こんな相談が続いたことがありました。 「今月で決算だけど黒字になりそう。今から黒字を減らすには?」「新しい事業は別会社にしたほうが税金的に有利ですか?」「来月から消費税の課税事業者になる。今月末で会社を閉じて翌月に新会社をつくるのはアリですか?」 こうした質問に私は率直に答えました。 「厳しいことを言うようですが、節税と経営はまったく別の話です。」 節税のために会社を動かすのではなく、会社の未来のために、節税をどう位置づけるか。それが本来の順序です。 相談に来られたのは社長の奥さまでした。節税を優先したときの弊害やリスクを一つずつ丁寧に説明すると、最後には笑顔で、 「ありがとうございました!次は主人も連れてきます!」 とおっしゃって帰られました。この一言が、とても印象に残っています。 経営の主語を取り戻す 誰しも「得をしたい」という気持ちはあります。でも、経営には「得」の優先順位があります。 補助金や節税は、あくまで手段であり、経営判断の主語にしてはいけないものです。 主語が「補助金」や「節税」になっているとき、経営者自身の意思決定は、すでに“外側の制度”に委ねられているかもしれません。 大切なのは、会社が持続的に成長していくために、どんな順番で、どんな基準で投資を判断するか。その軸を取り戻すことです。 「得の優先順位」をどう決めるか 「得」とは、単にお金が残ることだけではありません。たとえば、社員の成長、顧客との信頼、地域とのつながり――こうした“無形の得”こそ、会社を長く続けるための土台になります。 経営の判断に迷ったときは、こう問いかけてみてください。 「この“得”は、5年後・10年後の会社の姿につながっているか?」 補助金や節税も、それを支える一つの道具として使うなら有効です。でも、それを主語にしてしまえば、いつの間にか“制度の都合”で経営が振り回されてしまう。 まとめ 補助金や節税は「目的」ではなく「手段」 自社の未来に必要な投資を、自分のお金のつもりで判断する 経営の主語を取り戻すことで、意思決定の軸がぶれなくなる 「得の優先順位」は、5年後・10年後の会社の姿につながっているかで決める 2020年:公開/2025年11月17日:加筆・再構成

経営者を「本当の孤独」にしない

経営者を「本当の孤独」にしない

更新日:2025年11月2日※本記事は2019年に公開した内容を再構成し、2025年に加筆・更新しました。 目次 経営者の孤独とは、何か「まっきーは、社長を本当の孤独にしない人ね」話すことで、思考は形になる思考の化学反応が起きるときソクラテスの「産婆術」と、共鳴の対話経営者に必要なのは、「安心して考えられる場」社長を「本当の孤独」にしないということ経営は、対話で進化する 経営者の孤独とは、何か 経営者は、孤独だと言われます。その言葉を耳にするたびに、私はこう思います。 ──本当の孤独とは、“アウトプットする相手がいないこと”ではないか、と。 会社の中で経営者は、常に判断を迫られ、決断を重ねています。けれど、その決断の裏側にある迷いや葛藤を、誰かに話すことは意外と難しい。社員には話せない。同業の社長には、立場上の本音が言いづらい。家族に相談しても、具体的な解決にはつながらない。 そんな中で、思考を言葉にする機会を失うこと。それこそが、経営者を「本当の孤独」にしてしまうのだと思います。 「牧野さんは、社長を本当の孤独にしない人ね」 ある大阪の女性社長から、こんな言葉をいただいたことがあります。 牧野さんは、社長を本当の孤独にしない人ね この一言が、今も私の心に残っています。 ここ数ヶ月、とある法人の経営陣と一緒に「考える時間」を持っています。その時間は、何かを決めるための会議ではありません。経営の方向性や組織の在り方、理念の再確認など、経営者として“考えるべきこと”を、じっくり言葉にしていくための時間です。 私はただ、問いかけ、聴き、言葉の奥にある“本当に考えていること”を一緒に探していく。 最近ではこうした時間を「壁打ち」と呼ぶ人もいますが、私はあまりその言葉を使いません。 なぜなら、単に打って返すだけの時間ではないからです。そこにあるのは、もっと深いやり取り──相手の中の答えを、一緒に形にしていく時間です。 話すことで、思考は形になる 経営とは、日々の判断と決断の連続です。その過程で、多くの社長は誰にも相談できないテーマを抱えています。 しかし、誰かに話すことで、思考は形を持ち始めます。 話すうちに、自分の中の曖昧さが浮かび上がる。問いを受けるうちに、優先順位が見えてくる。そして、思考が整理され、方向性が定まっていく。 つまり、「話す」ことは、考えることの一部なのです。 対話を通じて、経営者は自分の中に眠っていた答えを見つけていきます。そして同時に、話を聴く側である私自身の中にも、新しい“考えの種”が芽を出します。 思考の化学反応が起きるとき ひとりで唸っていても出てこなかった答えが、対話の中でふっと見えてくる瞬間があります。 それは、お客さんの考えの種と、私自身の考えの種が反応して、より研ぎ澄まされた答えが生まれる瞬間。 まさに、思考の化学反応です。 この現象は、私が経営者支援をしていて最も好きな時間でもあります。どちらかが教える・教えられる関係ではなく、互いの思考が響き合って、これまでにない発想や洞察が生まれる。 そこに立ち会えるのは、支援者としての大きな喜びです。 ソクラテスの「産婆術」と、共鳴の対話 古代ギリシャの哲学者ソクラテスは、相手の中にある答えを導き出す方法を「産婆術」と呼びました。 人間の知恵や答えは、外から与えられるものではなく、本人の中にすでに存在している。それを引き出すのが“問うこと”の役割だ、と。 私の仕事も、まさにこの「産婆術」に近いと感じます。相手の中の答えを引き出す“産婆術”であり、同時に、自分の思考を磨く“共鳴の産婆術”でもある。 相手の思考が動くとき、自分の中の何かも同時に動く。それが、対話の本当の力です。 経営者に必要なのは、「安心して考えられる場」 多くの経営者が日々の業務に追われ、ゆっくり「考える時間」を取ることができていません。 でも、本当はそこにこそ経営の本質があります。数字を分析する時間よりも、組織の将来を語り、自分の価値観を見つめ直す時間の方が、経営の質を左右する。 そのために必要なのが、安心して思考をぶつけられる対話の相手です。 安心して考えを話せる相手がいると、人は自分の中に眠っていた答えを見つけることができます。言葉にした瞬間、曖昧だった思考が輪郭を持ちはじめる。そして、決断の精度が高まっていく。 それはまるで、頭の中に霧がかかっていた景色が、一気に晴れ渡るような感覚です。 社長を「本当の孤独」にしないということ 「社長を本当の孤独にしない人」──この言葉をいただいてから、私はずっと考えています。 孤独を完全になくすことは、たぶんできません。けれど、「孤立」にはしないことができる。 考えを整理し、悩みを言葉に変え、心の中のもやもやに光を当てる。 その時間を共に過ごすことで、経営者は再び自分の足で立ち、前に進む力を取り戻します。 経営とは、数字や戦略だけではなく、人の思考と感情の営みです。だからこそ、孤独の中で考えるよりも、誰かと一緒に考える時間が必要なのだと思います。 経営は、対話で進化する 経営者にとって、最も重要な資産は「考える力」です。そしてその力は、対話によって磨かれる。 自分の中の考えの種を、言葉にして人に伝える。相手の問いを受け、また考えを練り直す。その往復運動が、経営の質を高めていきます。 あなたには、安心して思考をぶつけられる相手がいますか? もしまだなら、あなたの中の“考えの種”を一緒に見つけてみましょう。その瞬間、経営の輪郭が、きっと変わります。

自社を客観的に見ていますか?

自社を客観的に見ていますか?

みなさん、週末はいかが過ごされましたか?私は、琉球フィルハーモニックさんのお計らいで、11月29日(日)開催「美らサウンズコンサート2020」の前日リハーサルを見学させていただきました。オーケストラのリハーサルを生で見るなんて滅多にない機会です。代表の上原さんに質問しながら、興味深くというか興奮気味に拝見しました。中学時代の音楽の先生のせいで「音が苦」になってしまった私ですが、クラッシック音楽にちょっと興味が持てたので、帰ったらすぐにAmazon Musicでリハーサルしてた曲を聞いてみました。はい、すぐ調子に乗ります。 私が相談員を務める地元商工会の経営相談窓口にいらっしゃった島バナナの生産販売事業者さんによる店頭販売があったので、先日行ってきました。 この事業者さんは、今年本格的に事業を開始したのですが、5月にツイッターを始めてすでに2000以上のフォローワーを集めており(スゴっ)、最近はじめたInstagramでも週に50ペースでフォローワーが増えています(マジっ?)。そこから通販サイトへ誘導して販売をジワジワと伸ばしているという、まさにインターネットマーケティングの教科書的な事業者さんです。実店舗も一店のみで販売していますが、出荷するたびに売り切れるほどの人気。 商工会へ来たときの相談は当時の通販サイトが抱える問題についてでしたが、お話を聞いて状況を整理したら、原因がシンプルで簡単にすぐ解決できるものでした。 さて、お店に行ってみたら、経営相談窓口に来てくれた他の事業者さんや、女性の起業支援をされている方もいて、みんなで島バナナの話題でガヤガヤ。 すると、島バナナの事業者さんから「牧野さん、あとどこを直せばいいですか?」という質問。 これを聞いていた私も含めたみんなの反応は、「え”ーっ!?」 島バナナさん曰く「いや、ウチにはたいして強みもないし、問題点ばかりだから」 これまたみんなで「え”ーっ!?」 私からは、「ナニ言ってんの!?いまは上手くいってるでしょ!変にイジらないほうがいいよ」これには、女性の起業支援をされている方も深く頷く同意見。若い同世代の事業者さんからは、「ウチなんかと比べて羨ましすぎる状況なのにっ」 この島バナナ事業者さん、とても謙虚な人なので現状になかなか満足できないのでしょうが、自社の状況や強みというものを自分で客観的に把握するのは難しいという点では、典型的な例でしょう。 みなさんは、自社の状況、自社の強みを客観的に把握できてますか?

成果を上げるための秘訣

成果を上げるための秘訣

成果を上げるための秘訣を1つ挙げるならば、それは集中である。成果をあげる者は最も重要なことからはじめ、しかも1度に1つのことしか行わない。  「経営者の条件」ピーター・ドラッカー キャー、耳が痛いです! 「最も重要なこと」って時間がかかったり、難しかったり、大変だったりするのはもちろん、何より苦手だったり嫌いなことが多く、後回しにしちゃうことってよくありません?だから目の前にある、すぐにできる得意で好きけど重要でないことに先に取り掛かってしまう… しかも、一つのことを終わらせてから次のことに取りかかればいいものを、途中で切り上げてついつい他のことに手を出してしまう… はい、私の日常です ^^;みなさん、気をつけましょう。

僕、満足、いっぱいしてますから

僕、満足、いっぱいしてますから

イチローというと、ストイックなイメージがつきまといます。 僕、満足、いっぱいしてますから 日米通算4000本安打を達成したときに記者からの「他の選手は日々、どこかで満足してしまっているようなところがある。(イチローには)それがないから、ここまで来られたのか?」との問いに対して発したこの言葉が今日のタイトルです。 今日だって、ものすごい満足してるし。いや、それを重ねないと僕はダメだと思うんですよね。満足してたらそれで終わりだと言いますが、とても弱い人の発想ですよね。僕は満足を重ねないと次が生まれないと思っているので、ものすごいちっちゃなことでも満足するし、達成感もときには覚える。でも、それを感じることによって、次が生まれてくるんですよね。意図的に、こんなことで満足しちゃいけない、まだまだだと言い聞かせている人は、シンドいですよ。じゃぁ、何を目標にしたらいいんですか?嬉しかったら喜べばいいんですよ、というのが僕の考え方ですけどね イチローの言葉には余計な解説は不要ですね。みなさんそれぞれの自分なりに味わいましょう。 私はというと、最近、自分の歩みの遅さに焦りを感じたり落ち込んだりしていたので、これを読んで「大丈夫。自分はちゃんと進んでる。」って思い直せました。