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誰がお客か?

誰がお客か?

受動喫煙が苦手な伴走舎 牧野です。 一昨日に出席した、那覇で行われた経営者さんの集まりのお話の続きです。 私のとなりに座ったのは、4月に会員制のバーをオープンしたばかりの女性でした。沖縄にも緊急事態宣言が出た直後だったので、オープンして3日で休業したものの、最近無事に再オープンされたそうです。会員制の安心して飲めるお店を目指したいけど、しばらくはオープンにして営業しているとのこと。 この方、お店を完全禁煙にしているそうです。お店が目指しているのが、安心して落ち着いて飲めるお店、ですからコンセプトとマッチしています。 それに、素晴らしいと感じたのがもう一点。それは、 「誰がお客か?」をちゃんと見ている。 タバコを吸わない人同士で飲みに行くと困るのが店選び。となりのテーブルにタバコをバカバカ吸うグループが来たりして不愉快な思いをしたという話はよく聞きます。 とはいえ、お酒飲むところなんだからタバコはつきもの、と思ってらっしゃる方は多いと思います。 日本たばこ産業が1965年から続けてきた「全国たばこ喫煙者率調査」では、日本の成人の喫煙率は減り続け、2018年にはピーク時の3割にまで減ってしまい「JTは、喫煙者率が減少傾向にあるものと考えております。」というコメントを残して翌年以降の調査を終了しました。https://www.jti.co.jp/investors/library/press_releases/2018/1213_01.html その調査によれば、2018年の成人の喫煙者率は、男性27.8%、女性8.7%、男女合計で17.9%。タバコを吸う人は成人の5人に1人にも満たない。 つまり、4人のグループであれば、タバコを吸う人が1人もいない確率のほうが圧倒的に高くなります。 たくさんのお客を狙うのであれば、タバコを吸わない人。ニッチに攻めるのであれば、スモーカー。 あなたは、誰をお客にしていますか?

真似しようにもマネできない?

真似しようにもマネできない?

Zoom飲み会が好きなのは運転代行で帰るのが面倒だからと思っていたのですが、受動喫煙がゼロだということも理由の一つだと、昨晩2ヶ月ぶりに那覇へ外出してわかりました。タバコが苦手というよりダメな牧野です。 ということで昨晩は那覇で経営者さんの集まりに参加してきました。同じテーブルにはたまたま中華料理屋さんと沖縄そば屋さんという飲食店を営む経営者さんが二人いて、お話をうかがっていると新型コロナの影響の受け方がとても対照的でした。 中華料理屋さんの方は、同じ場所で37年間ずっと営業してきて地域に根づいているせいか、影響を受けないどころかかえって売上が伸びている、というお話をされていました。 一方の沖縄そば屋さんは、営業してまだ10年にも満たないので地域に根づいておらず、新型コロナの影響をまともに受けている、とおっしゃっていました。 これ、本当に地域に根づいているかいないかという時間の問題でしょうか? 歌舞伎座の向かいにある創業152年の弁当屋さんも、昨年夏から廃業か事業譲渡を考えていたということですが、新型コロナの影響で客足も減り譲渡先が見つからずついに暖簾を下ろしました。 では、味でしょうか? 周囲の方々のお話をお聞きしても、中華と沖縄そば、どちらのお店も味には定評があります。 となると理由は、わからない、といったところでしょうか。 この中華料理屋さんには、先代から続く常連客さんがたくさんいるというのは確かです。それにこのお店、本当に美味しいです。チャーハンは絶品です。しばらくすると、また食べたくなります。それが口コミとなって長い時間をかけて地域に広がったことでしょう。 すべて理由の「一つ」です。でも、これだ!という理由はよくわかりません。 これを専門用語で「模倣困難性」といい、他社にはマネがしにくいという意味です。この模倣困難性には4つほど規定要因がありますが、その中でも「歴史的要因」と「因果関係の不明性」がこの中華屋さんの模倣困難性の要因といえるでしょう。 早い話が「会社の歴史の中で形成されたけど、なぜなのかよくわからん」ということです。 長い時間がかかるのは確かなのに、なぜなのかよくわらからない、となるともう他社にはマネのしようがなくてお手上げですね。 こういう会社はホントーに強いです。

社長がやるべき仕事

社長がやるべき仕事

夏空のつづく沖縄。いくら天気が良くても、潮風では洗濯物はパリッと乾いてくれません。我が家の洗濯大臣、牧野です。 ここ最近、何度もご紹介している私の大切なお客様、TEORI WORKS OKINAWAさん。国指定の伝統工芸、琉球絣・南風原花織の工房を営む個人事業主さんで、娘といっていいほど年の離れた女性です。※TEORI WORKS OKINAWAさんが登場するバックナンバーはこちら▼ 先行きが不安なときのアドバイス▼ 最悪の状況への備え 個人事業の彼女にとって、牧野への月々のコンサル料は決して安いものではありません。売上に対してもそこそこの比率です。まだ軌道に乗るかどうかもわからない開業の段階からそんな高い費用を払ってまで、牧野になぜ伴走を依頼するのか?沖縄の伝統工芸関係者として6年以上のつきあいがあり、信用してくれているというのはあるのでしょうけど.... そこで本人に直接聞いてみました。 「私は、和服であっても洋服であっても、自分の作った服を気に入ってくれる人に着てもらいたくて工房を立ち上げたけど、経営のことは全然わからない。自分がやりたい服作りに集中したいから、わからない経営のことで不安になったり、自分で勉強したりする時間はもったいない。だったら専門家の牧野さんに全部聞いて教えてもらったほうが早いし、安心だから。」 でも、個人事業としては安くないコンサル料。どうしてそこまでの費用をかけるのか。 「沖縄は人が持っている知識とか技能に対する対価が低すぎると思います。私はそういうのがイヤなんです。人が苦労して時間をかけて身につけた知識や技能をタダ同然に扱うのがイヤなんです。織物の世界も職人さんへの工賃が安すぎるのが昔から問題になっていますよね。いくら技術のあるベテランの職人さんであっても。そんな現状を変えたい、というのも私がこの工房を立ち上げた理由のひとつです。だから牧野さんにも正当な対価だと思うからお支払いしています。」 彼女がハッキリと自分の意見を言うのを聞いたことがなかったので、ちょっと感動的でした。 自分のやりたいこと得意なことに集中して、苦手なことはそれを得意とする人にまかせる。 「自分がやらないことを決める」 これが社長のやるべき仕事の第一歩ではないでしょうか。

こんがらがった話の整理法

こんがらがった話の整理法

今日の沖縄は雲の切れ間から青空も見えます。梅雨明けを先取りしたのか、セミが鳴き始めました。 昨日は、牧野の得意技は強いて言えば「整理」とご紹介しました。「整理できた」が私との個別相談を終えた方が漏らす感想のNo.1だと。 じゃぁ、牧野はどうやってその「整理」をやってるんだ?というご質問をいただいて気づいたのですが、特に手法のようなものを使っているわけでもなく、相談の最中は整理を意識していることもないんです(ドキッ)。 コロナ前のことですが、日本の大手物流会社(あの3社のうちの1社です)で長年海外畑を歩んできた方が、定年後は県の物流アドバイザーなどを務めて、現在はとある物流センターの所長をしてらっしゃいます。私は、この方の温和な部分しか知らないのですが、東南アジア地域の現地法人でしかも物流業界でキッタハッタをしてきた人ですから、お若いときは絶対怖かったはず Σ(゚∀゚ノ)ノキャー。 この方が「相談いうか、グチ聞いてよレベルやねんけどぉ…」とおっしゃるので、一緒に串カツ田中へ。ソースを二度づけしないように注意しながらお話をうかがっていると、登場人物が多いし、関係が複雑すぎてよくわからない事が多いんです。そうなると、「この人とこの人の関係をもう少し詳しく…」「その人とこっちの人では?」「じゃぁ、この人が持っている権限はどこまでなんですか?」「それに対してこっちのこの人の役割は?」「その具体的な仕事内容は?」「それを○○○○しちゃうことってできます?」なんて、しつこく質問攻めになっちゃうんです。そうすると、「私の理解なんですけど、ぶっちゃけこういうことですか?」そこからまた、相手の方が「ああ、いやね、牧野さん....」と説明があって、そしてまた私からの質問、という繰り返しになっていきます。 この日は最後にシメの「かすうどん」をすすりながら、「牧野さん、だいぶ整理できた」のご感想をいただいて散開しました。 どうやら、牧野は・理屈でわからないとわかった気にならないらしく、・わからないことをわからないままにしておくのもできないらしく、・しつこく質問して理解しようとしていくうちに、・相手の頭の中もだんだんと整理されていく、ということなんだと思っています。 あなたも「牧野の質問攻め」をおひとつ、いかがですか? あとがき:コロナ前のこの時期、全国の串カツ田中ではすでにソースの二度づけOKだと聞いていたのですが、那覇のこの店はまだ二度づけ禁止でした。いまの状況では「ソースは毎回新しいものに取り替えています」とはっきり書かないと、お客さんも来ないかも知れませんね。

山を選ぶよりパートナーを選ぶほうが難しい

山を選ぶよりパートナーを選ぶほうが難しい

本州の梅雨入りとともに梅雨明けした沖縄では毎日夏空が続いています。 先日日曜日の情熱大陸は登山家の平出和也さん。未踏峰・未踏ルートにこだわる世界のトップクライマー。 この5年ほどの平出さんの相棒が、同じくトップクライマーの中島健郎さん。パキスタンのシスパーレを新ルートで登頂に成功した功績で、二人は登山界のアカデミー賞ともいわれる「ピオレドール賞」を受賞しています。 二人はお互いをロープでつなぎ、命を預け合いながら山を登っていきます。氷の壁から滑落したり、氷の裂け目に落ちてしまったとき、つながっているロープのおかげでまさに九死に一生を得たシーンも放送されていました。 中島健郎さんは言います。 (平出は)安心感があるんですよね。ロープを繋いでいて。やっぱりお互い命をかけているんで。山を選ぶよりパートナーを選ぶほうが、よっぽど大変だし、難しいことなんですよ。ただ体力があって技術があって。それだけじゃ全然、山って登れないんですよ。 「山を選ぶよりパートナーを選ぶほうが難しい」 これを聞いて、何か思い出しません? 本の一節をそのまま抜き出します。 偉大な企業への飛躍をもたらした経営者は、まずはじめにバスの目的地を決め、つぎに目的地までの旅をともにする人びとをバスに乗せる方法をとったわけではない。まずはじめに、適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、その後にどこに向かうべきかを決めている。要するに、こう言ったのである。「このバスでどこに行くべきかは分からない。しかし、分かっていることもある。適切な人がバスに乗り、適切な人がそれぞれふさわしい席につき、不適切な人がバスから降りれば、素晴らしい場所に行く方法を決められるはずだ」飛躍を導いた指導者は、三つの単純な真実を理解している。第一に、「何をすべきか」ではなく「だれを選ぶか」からはじめれば、十キロほど走ったところで行く先を変えなければならなくなったとき、どうなるだろうか。当然、問題が起こる。だが、人びとがバスに乗ったのは同乗者が気に入ったからであれば、行く先を変えるのははるかに簡単だ。「このバスに乗ったのは、素晴らしい人たちが乗っているからだ。行く先を変える方がうまくいくんだったら、そうしよう」。第二に、適切な人たちがバスに乗っているのであれば、動機付けの問題や管理の問題はほぼなくなる。適切な人材なら厳しく管理する必要はないし、やる気を引き出す必要もない。最高の実績を生み出そうとし、偉大なものを築き上げる動きにくわわろうとする意欲を各人がもっている。第三に、不適切な人たちばかりであれば、正しい方向が分かり、正しい方針が分かっても、偉大な企業にはなれない。偉大な人材が揃っていなければ、偉大なビジョンがあっても意味はない。 コリンズ, ジェームズ (2001)『ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則』山岡洋一訳, 日経BP社 pp.66-67. 以前にもご紹介した本の一節ですが、経営書として古典的名著になりつつありますね。そして「誰をバスに乗せるか」も経営の格言になりつつあります。 山に登るのも経営も、「何をする」よりも「誰とする」のほうが大切。