2019.03.25
目標は「数字」ではなく「仮説」である
目標は「数字」ではなく「仮説」。どう動けば達成できるのかという“考える構造”こそが、経営を成長させる鍵です。数字の奥にある思考を、もう一度見つめてみませんか。 (こちらの記事の続きとしてお読みください。) 目次 なぜ、目標を立てても達成できないのか「目標」は、結果ではなく仮説である売上を“分解”して考える行動の仮説を持つと、振り返りが変わる目標は「原因を見つけるための仮説」PDCAを回すために必要なのは「根拠のある目標」「計画」ではなく「仮説」として目標を立てる目標の本当の役割とは?数字の奥に、思考の構造を持つあなたの会社の目標は、どんな仮説ですか? なぜ、目標を立てても達成できないのか 経営計画を立てるとき、「今年は売上を○%アップしよう」そんなふうに目標を掲げること、よくありますよね。 けれど、年度末の振り返りでこんな思いをしたことはありませんか? 「なぜ達成できなかったのかが分からない」「うまくいった理由も、結局“たまたま”だったのかも」 実はこれ、特別なことではありません。どんなに丁寧に数字を並べても、「どうしてそうなったのか」が分からないまま終わる会社は多いんです。 その原因は──目標の立て方に“仮説”が足りていないから。 「目標」は、結果ではなく仮説である 私は、こう考えています。 目標は、「結果を測るための数字」ではなく、「行動を導くための仮説」である。 どう動けばその数字に届くのか。どんな前提条件のもとで達成できるのか。それを明確にしておくことで、結果が良くても悪くても、“次の一手”が見えてきます。 逆に、数字だけを掲げた目標は、地図のない旅のようなものです。どこを通れば目的地に着くのかが分からない。だから、道に迷っても原因を突き止められないのです。 売上を“分解”して考える たとえば、売上を例にしてみましょう。 「売上=商品単価 × 販売数量」あるいは「売上=1日の平均売上 × 営業日数」 どちらの式で捉えるにしても、売上という結果は、複数の要素の掛け算でできています。 にもかかわらず、多くの会社では“結果の数字”だけを目標に掲げてしまう。「売上10%アップ」という目標の裏側に、どの要素をどう動かすのかという仮説がないんです。 行動の仮説を持つと、振り返りが変わる たとえば、こう設定したとします。 「1日の平均売上を3万円から3万5千円に上げる」 この目標には、さまざまなアプローチが考えられます。 来店数を増やす(客数アップ) 客単価を上げる(価格戦略やアップセル) 営業日数を増やす(稼働率アップ) どの要素をどれくらい動かすのか。その仮説を立てておくことが、目標設定の本質です。 たとえば、「客単価を上げる」仮説を採用したなら、メニュー構成を見直す、セット販売を導入する、スタッフの提案力を強化する──といった具体的なアクションが見えてきます。 すると、振り返りのときも「感想」ではなく「検証」ができる。 ・来店数は計画どおりだったか?・客単価は想定どおりに上がったか?・施策ごとの効果はどうだったか? 数字の達成・未達だけでなく、「なぜそうなったのか」を構造的に見られるようになるんです。 目標は「原因を見つけるための仮説」 つまり、目標は結果を測るための“ゴール”ではなく、行動を導く“仮説”であり、さらに、原因を見つけるための仮説でもあります。 仮説をもって立てた目標は、達成した後も、未達だったとしても、必ず次の成長のヒントを残してくれます。 逆に、仮説を持たない目標は、どれだけ数字を追っても「なぜ」が分からないまま終わります。それでは、来年も同じ壁にぶつかるだけです。 PDCAを回すために必要なのは「根拠のある目標」 経営の基本サイクルであるPDCAも、“根拠のある目標”がなければ機能しません。 Plan(計画)を立てるとき、「どう動けば達成できるか」の仮説があるからこそ、Do(実行)して、Check(検証)して、Act(改善)につながる。 根拠を持って立てた目標は、検証のときに「どこがズレたのか」を明確に教えてくれます。 つまり、仮説のない目標ではPDCAが回らない。数字を追うだけの“空回りサイクル”になってしまうんです。 「計画」ではなく「仮説」として目標を立てる ここで、少し視点を変えてみましょう。 多くの経営者が、「計画」という言葉に“正解を作らなければならない”というプレッシャーを感じています。 でも、経営に正解なんてありません。だからこそ、「計画」ではなく「仮説」として目標を立てるんです。 仮説であれば、修正していい。実行の中で、現実に合わせて変えていけばいい。 「一度決めたから守らなければ」ではなく、「試して、確かめて、次を決める」。 それが、変化の激しい時代の経営に必要な思考の柔軟性です。 目標の本当の役割とは? 目標とは、「組織が同じ方向を向くための仮説」でもあります。 社員一人ひとりが、「自分はこの目標にどう関わっているのか」を理解できるようにする。そうすると、現場の行動に一貫性が生まれます。 トップダウンの数字だけでは動かない組織も、仮説を共有しながら一緒に検証することで、“共に考えるチーム”に変わっていくんです。 数字の奥に、思考の構造を持つ 経営とは、数字で語るものだと言われます。でも本当は、数字の“裏側にある思考”こそが、経営の質を決めます。 目標は数字ではなく、思考の構造。その構造を明確にすることが、会社を動かし、チームを育てる土台になります。 「うまくいった」「うまくいかなかった」ではなく、「どんな仮説を立て、それがどう機能したのか」を見る。 その繰り返しが、会社の学習を深めていくんです。 あなたの会社の目標は、どんな仮説ですか? 振り返ってみてください。 あなたの会社の目標は、“数字を追いかけるためのゴール”でしょうか?それとも、“行動を導くための仮説”でしょうか? もし後者に変わったとき、きっと経営の風景も変わります。 数字の先に、行動の仮説がある。行動の先に、学びと成長がある。 それこそが、「次の一手」が見える経営のあり方です。 2019年:公開/2025年11月8日:加筆・再構成